商業BLもチラホラ楽しむ私。
丸木文華先生の本は2冊目でございます。
1冊目は「ふたご〜緋牡丹と白百合〜」だったのですが、作家さんてすごいですね。
時代設定によって言葉の種類が変わると言いますか、「ふたご」の方は明治時代が舞台だからか近代文学を読んでいるような気にさせる文章で、「言いなり」の方はきちんと現代文学的な文章になっており、作家さんはこんなところまで徹底させるのだなぁと感心しきりでした。
「ふたご」の方も楽しんだ私ですが、今回読んだこの「言いなり」。
めちゃくちゃ性癖のドツボだったので、滾る思いをそのまま記事にしていきたいと思います。
まずはなんと言っても剛。
怖い系の攻ですね。
ただ私としては嬉しいド執着系の攻です。
家族と殴り合っていた中学時代の方がピュアだったと思うのは私だけでしょうか。
自分の同性に対する異様だと思っている感情を持て余して、精神的な嫌がらせしか出来ない中坊だった時の方がまだ矯正できる余地があったような。
「お前よお、また引っ越すんだって?」とか、「次の学校でも沢村みたいなやつがいればいいな」に対する圭一の返答に傷付いた顔をした時辺りまでなんじゃないでしょうか。
まだ人の道に戻って来れたのは。
いや、中学の時にやったことも決して許されないことなんですがね。
ただ圭一も回想で何度か思っているように、吉住にされたことも当然嫌だったが、圭一が無理して高校デビューしたのは沢村に抱かれたからなんですよね。
圭一を本質的に傷付けたのは女のように抱いた沢村だったんですよ。
同じ抱くにしても圭一はむしろ剛に抱かれるのを自分から望んでしまうぐらいなわけですから、やはりこの物語の攻は剛なんだなぁと思いました。
圭一から「どんなに健気な犬の振りをしていても、結局こうしていじめるようなやり方でしか愛せない」と思われているように、剛は根っからの嗜虐側ですよね。
「胸に、ピアスでもつけてやろうか?」とかまんま中学時代で吹きましたが、犬のように愛されたいから犬になりたいというのも本当なんでしょう。
圭一のtkbにピアスをつける剛の薄い本が欲しいです丸木先生(*´∇`)ノ
tkbだけじゃ満足できなくてtnkにもつけそう、剛なら。
私結構鈍いんで例のお風呂のシーンまで剛は沢村だと思っておりました。
でも剛が初めて圭一の部屋に泊まった時から「中学の時はグレてた」と言ってたんですよね。
沢村はおせっせはしてましたが別にグレてたわけではないので、この時から剛は吉住だと暗示されてたんですね。
お次は主人公、圭一。
えらいヤツに捕まったね、ご愁傷さまという感想しか出てこない…
いやこれ圭一が本気で剛を拒絶していたら夏美ちゃんと駆け落ちでもしなよと言いたいところなんですが(まぁそれでも剛は全力で追いかけてくるでしょうが)、圭一は「恋人みたいに好きってわけじゃない」けど「お前がいなきゃだめだと思う」と言っているんですね。
私は圭一の気持ちはわかりませんが、めちゃくちゃ複雑なんだろうなぁと同情心は湧きます。
体の相性は抜群で、多分今後も圭一が逃げたら追いかけて来るであろう奴だけど、自分にトラウマを植え付けた奴でもあって。
相手は愛を求めてくるけれどこちらは愛せるわけではなくて、でもいなくなられたら困る、そんな存在。
めっっっっっっっちゃ複雑。
でもだからこそBL作品としては光るんでしょうね。
これが丸木文華マジックだと思うと喜んでズブズブはまろうと思いました。
目次のタイトルとは違う、場面毎のタイトルみたいなのあるじゃないですか。
「言いなり」だと「犬」とか「発見」とか。
最後のタイトルが「言いなり」だったのが本当、秀逸だなと思いました。
「言いなり」というタイトルが出るのがちょうど圭一が剛の提案に従ってサークルを辞めるところなんですよね。
圭一が剛の言いなりになり始めたところだったので、「言いなり」というタイトルが出たところを最初に読んだ時ゾクッとしました。
この話は圭一が剛の言いなりになっていく話なんだと。
丸木文華先生は文章だけでなく絵も描かれるので「ふたご」では挿絵も兼任されておりましたが今回は別に絵師さんがおりまして、minato.Bob先生が担当してくださっています。
今回は例のお風呂のシーンが特に性癖に響きましたね…スクショするぐらいココチンに響きました。
ケイ君をがっちりホールドするモジャではなくなった剛に、どこか虚ろな目をした圭一。
ここから2人の関係が逆転していくことを示している、とても良い挿絵だと思います。
特にモジャではなくなった剛がエロい。
ひたすらエロい。
そりゃサークルの女子を虜にしますよ。
BL作品に対する感想としては相応しくないのかもしれませんが、森田夏美ちゃんも結構好きです。
安堂に公開0721させられそうになった時は確かに圭一視点なら酷いと思うのかもしれませんが、男の圭一や敦司ですら止められない安堂を喧嘩の心得があるわけでもない女が止められるわけないですからね。
あれはああするしかなかった、言わば防衛行動だと思います。
まぁだからといって被害者からしたら許せるかどうかは別問題だと理解はできます。
でも夏美ちゃんの気持ちを考えると切ないんですよね。
「『セフレ』だもんね、あたしたち」の台詞からもわかる通り、夏美ちゃんは圭一にわりかし本気だったと思うんですよ。
思えば最初から圭一の彼女アピールしてたような。
「それ、あたしがあげた香水なんだよ」って、圭一の方から言うのではなく夏美ちゃんの方から言うのがポイントかなと。
その後も軽井沢での圭一の看病や、圭一が剛に完全に落ちた時の会話とか、圭一が剛に出会う人生でなければ圭一の良いお嫁さんになったんじゃないかなと思いました。
あ、でもそうしたらそもそも圭一が沢村に抱かれる確率も低くなって高校デビューすることもテニスサークルに入ることもなく、夏美ちゃんに認識される存在でないままだったかもしれませんね。
そう考えるとこのお話、夏美ちゃん視点で見るとどう考えても切ない話になってしまうのも辛い。
いやそもそもサブキャラに思い入れ過ぎなんですが、どうしてもこういう切ない想いを抱えたキャラに感情移入してしまいます。
ということでオタク特有の長さになってしまいましたが、丸木文華先生の「言いなり」。